Johns Hopkins大学の中村秀樹博士のセミナーを開催しました!

Johns Hopkins大学の中村秀樹博士が来訪され、セミナーを行っていただきました。


Maeda Lab., Active and Living Matters Seminar
Dr. Hideki Nakamura Department of Cell Biology, Johns Hopkins University
日時:15:00〜16:30, June 2 (Fri), 2017
場所:物理第3セミナー室 Seminar Rm.3, W1-A723
タイトル:細胞内の物理現象を外から操作する−相転移と力学的相互作用の場合−
アブストラクト:
 従来の生物学は、細胞内でおこる様々な現象を、構成要素間の結合・解離というきわめて単純化した化学的モデルを用いて理解しようとしてきました。さらに、それぞれの要素の核酸・輸送という時空間的ダイナミクスまで考慮に入れることで、細胞内で複雑に自己組織化された様々な現象についての理解は、少しずつ深まりつつあります。一方、最新の細胞生物学実験の結果から、細胞内では上記のような単純なモデルだけでは理解の難しいさまざまな物理現象が起こっているということが分かってきました。核小体やRNA顆粒を構成するタンパク質の相分離・相転移現象や、細胞内構造間の力学的相互作用などについては中でも多くの報告があり、細胞機能の発現に不可欠な要素として認知され始めています。
 
 最近、我々はポリペプチド鎖のゾル−ゲル相転移と、細胞内構造に作用する物理力という二つの物理現象を、生細胞内で非侵襲的に操作する技術を開発しました。これらの技術を発展させ、細胞内の物理現象を自在に制御することで、個々の物理現象の生物学的意義が初めて理解できると考えられます。 今回のセミナーでは、まずペプチド鎖のゾル−ゲル相転移を小分子化合物や光で制御する実験系、”iPOLYMER”の開発についてご紹介します[1]。この技術を用いて、RNA顆粒の一種であるストレス顆粒のマーカータンパク質を特異的に細胞内の人工的ハイドロゲル構造に集積させることに成功しました。
 さらに、現在開発中である”細胞内アクチュエータ”を示します。この技術でミトコンドリア表面に物理的力を作用させて変形させ、ミトコンドリアの構造−機能相関について議論します。

[1] “Intracellular production of hydrogels and synthetic RNA granules by multivalent enhancers” (http://biorxiv.org/content/early/2017/03/16/117572)

トップジャーナルにアクセプトされたての内容を話題提供いただき、さらに未発表のデータは生命科学の謎に迫る新しい技術と結果を提示されていました。複雑物性基礎の研究室からも多くの参加者があり、盛況のうちにセミナーは終わりました。

セミナー後は中村さんと周船寺のお寿司屋さんで会食し、アメリカでの研究の状況などを色々と教えていただきました。また遊びに来てください!

更新日:2017年6月02日